今日から勝手にエッセイストvol.3|キャッシュ時代の思い出

今日から勝手にエッセイストvol.3|キャッシュ時代の思い出

仕事帰り、さくっと夕飯を食べて帰ろうと思い、インドカレー屋に立ち寄った。

ナンもおかわりして、1人ごはんを楽しんだ後、ふと財布に現金がないことを思い出した。少なくともSuicaかカードは使えるだろうとレジに向かうと、何のポップアップもない。

嫌な予感。

「すみません、カードって使えますか?」

「スミマセン、現金だけなんですよ」とおそらくインド人のお兄さん。

担保として、なぜか手に持っていたイヤフォンを置いてコンビニに急ぐ羽目になった。

PayPay、楽天Pay、LINE Pay、QUIC Pay、Origami Pay、ファミペイ、Pay・Pay・Pay・・・。怒涛のPAY乱立時代に、東京のど真ん中、駅直結オフィスビルのレストランでランチタイムでもないのに現金オンリーの店に出会うとは。

現金から電子マネーへの過渡期最終フェーズであろう今、あと数年もすれば「私たちが新人だった頃は普通に現金使ってたんだから!」なんて言う時代になるだろう。

コンビニからインドカレー屋への帰り道、現金へのメモリアルとして、キャッシュ時代の思い出を記録しようと決めた。

 キャッシュ時代にも、今日とちょっと似た、少し理不尽な思いをしたことがあった。新卒1年目、地方勤務となり営業をしていた頃、アポに遅れそうになり、経費申請もできないタクシーに自腹で乗った。

降りる際、「すみません1万円しかなくて」と差し出すと、「1万円のおつりなんてないよ!ちょっとコンビニ止まるから、くずしてきて。」と運転手さん。

急いでいるからわざわざタクシーに乗ったのに、コンビニで欲しくもないMINTIA(MINTIA自体は好きです)を買ったのをよく覚えている。

当時は「1万円を出す私も悪いよね」なんて思いつつ、MINTIAを買ってくずした現金で支払いをしたが、今ではあの街でもキャッシュレスでタクシーに乗れるのかな。

 もう少し楽しい現金の思い出だと、「共通財布」がある。

友達や彼氏と旅行やデートに行く際、1人1万円など、決めた額の軍資金をそれぞれ最初に共通のお財布に入れる。旅の最中、小さな支払いはその共通財布から行うことで、精算の手間が省けるのだ。「2人のお財布」を買うこと自体が、とても楽しい思い出だった。

現金以外でのお金のやり取りが簡単になった今でも、共通財布はまだ続いてもよいイケてるアイデアだと思う。

 もっと昔の記憶を辿ると、小学校低学年の頃に横断歩道で小銭をぶちまけたことがあった。信号が赤になりそうだったので、小銭を拾いきれず、横断歩道を渡りきった。振り返ると、車が行き交う中、反対側に渡ったおじさんがまだ落ちている私の小銭を指さしているのが見えた。

また信号が青になっても、小銭をぶちまけたことがなぜかとても恥ずかしく、おじさんが呼んでいるにも関わらず、拾いに戻れずにそのまま走り去った。

当時の数百円はとても大金だったので、お金を落としてしまったことへの罪悪感が大きく、おばあちゃんに打ち明けると、申告した額を財布に入れてくれた。

おばあちゃんはお金持ちだなという尊敬と、なくしたお金が戻ってなんとなくほっとした気持ちを大人になった今でもおぼろげに覚えている。

「お金」の形が変わり、世の中はどんどん便利になる。

スマホ1台あれば、財布なんてなくても1日過ごせるのだ。

キャッシュレス大賛成の私だけど、キャッシュ時代のなんともいえない思い出はどこかに取っておきたいと思う。

Dear cash, please rest in peace.