夏目漱石の『こころ』を読んで|【読書感想】

夏目漱石の『こころ』を読んで|【読書感想】

きっと授業で扱ったはずである夏目漱石の『こころ』。

正直なところ、大まかなあらすじすら、本を手に取るまで記憶にありませんでした。大人になると教養を身に着けることで広がる世界があるんだ、と日々気づかされます。今回は、改めて日本の純文学をきちんと読もう、という思いで『こころ』を読んでみました。

人生のどの過程で読むかによって、感じ方が大きく異なる本だと思います。

28歳の今の自分が感じた感想と、気付きについて書いてみます。

あらすじ

この本では、主人公である「私」が、自身がまだ書生(学生)であった頃の出来事を振り返っています。

上:先生と私
中:両親と私
下:先生と遺書

このような3部構成になっていて、(上)では私が慕うこととなる先生との日々について、(中)では父親の病気の知らせから故郷に帰省した先での日々について、そして最後の章である(下)は、まるまる先生の遺書として書かれています。

「先生と私」の序盤で「私」は先生に対してこのような気持ちを綴っています。

私は最初から先生には近づきがたい不思議があるように思っていた。それでいて、どうしても近づかなければいられないという感じが、どこかに強く働いた。こういう感じを先生に対してもっていたものは、多くの人のうちで、あるいは私だけかもしれない。しかしその私だけにはこの直感がのちになって事実の上に証拠立てられたのだから、私は若々しいと言われても、ばかげていると笑われても、それを見越した自分の直覚を、とにかく頼もしくまたうれしく思っている。

『こころ』先生と私 P.21

「私」は、どうして自分がこういった気持ちを持つのか、先生が頑なに語ろうとしない過去が彼をどう変えたのか、分からないまま、先生という人間に惹かれ、慕うようになります。

そして先生は、そんな彼に「何千万という日本人のうちで、ただあなただけに、私の過去を物語りたいのです」と言い、自身のエゴで犯した過去の過ちと、自らの死を決意させることとなったその罪の意識を、遺書として「私」に届けるのです。

感じたこと

ここからはネタバレがありますので、ご了承ください。

誰にでも起こり得る「結果がすべて」の失敗と後悔

先生は長く付き合った友人であるKを辱め、出し抜き、傷つけ、そして自殺に追いやりました。

相手の性格や強い思想を理解した上で、これを言ったらKが自分も好意を寄せるお嬢さんから手を引くだろうと考え、「精神的に向上心のないものは、ばかだ」と伝えます。そして、自分の気持ちをKに事前に伝えることなく、お嬢さんの母親に対して結婚の申し込みをしました。

ここで思うのは、これって割と誰にでも起こることなんじゃない?ということです。

友達同士で同じ人を好きになり、友人がそれを先に打ち明けてきて焦り、抜け駆けして告白して付き合った!なんて話は漫画や現実でも割とある展開です。結果としては、「その友人とは絶交した」、「大喧嘩したけど彼氏と破局した後仲直りした」くらいで終わることが多いのではないかと思います。

ただ、もしその自分が出し抜いた友人が自殺してしまったら、どうでしょうか。

この物語の先生と同じように、激しく後悔して、パートナーにも本当のことを打ち明けられず、一生罪の意識に苦しむことになるはずです。

相手が自殺をするほどの重さでなくとも、「軽い気持ちで誰かをいじったら、それが本人の耳に思いがけなく入り、結果的にすごく傷つけて後悔した」なんてことは誰にでも起こり得るのではないでしょうか。

でももし、それが本人の耳に入らなければ、罪の意識なんて感じることもなく、同じことを無意識のうちに繰り返すと思います。

「結果」として、悪いことが起きないと自分の罪に気付くことはとても難しいのです。

「犯罪と逮捕」も1つの例かもしれません。例えば芸能人の麻薬使用のニュースです。ずっと繰り返し利用していても、罪悪感はありつつも結局そんなに強く悪いことをしているという意識はないかもしれません。でも犯罪者として捕まって、連日ニュースで晒され叩かれ、本当に惨めな思いをしてやっと真の意味での後悔をするのはないでしょうか。

何か大きな失敗をしたことがある人は分かると思いますが、あと時にこうしておけば、という止めるポイントはたくさんあります。

本当に最悪の結果になってしまってから初めて後悔するのではなく、自分の日々の行動がどういう結果を招くのか想像力を働かせて、そういう悪い結果が起こる前から反省できるようにしたいと思います。

周りの人はあなたのことをそんなに気にしていないし、人生は長くて色々ある

Kは真宗寺に育ち、特別な思想を持っていたこともあり、自分に起きたことを消化できずに自らの命を絶ってしまいました。色々な葛藤があったと思うし、彼が死のうと思った本当の理由は、この本に読者が考えさせられることの1つです。

ただ、彼の気持ちをすべて理解していないことを踏まえても、私が彼に言いたいのは、「そんなことで死ぬな」です。

世の中には、お嬢さん以外にも素敵な女性はたくさんいて、先生よりも深く付き合えるかもしれない友人がたくさんいます。 そして周りの人間は、あなたのことをそんなに気にしていないです。

Kがもし、この悩みを他の友人や下宿先の奥さんに打ち明けていたら、きっと彼を楽にしてあげられる言葉がかけられて、あんな終わりにはなっていなかったはずです。

たまに、小学生などがいじめを苦に亡くなるニュースがあります。本当に本当に無念でなりません。私は小学生時代の友人で、今でも交流がある人は1人しかいません。0人の人も世の中にはたくさんいると思います。それでもそんなことは全く関係なく幸せに暮らすことができます。

長い人生で見て、あとから考えたらちっぽけなことで、まだ何も知らない、未来のある小学生が自らの命を絶つなんて辛すぎると思います。

私はいじめのない社会を作ることはもちろん大切だと思いますが、それ以上に、子どもには人生は長くて色々ある。今がすべてではないからもっと楽観的に考えていいんだよ、と教えてあげたいと思います。

おわりに

この作品は人の『こころ』の汚い部分をやずるい分を洗いざらい書いています。そのこころをどう感じとるかは、自分のこれまでの経験によって異なるように感じました。

また数年後の自分がこの本を読んだ時に、何を感じるか、楽しみです。